【自転車奔走記】第590回。

【ケアマネの自転車奔走記】連載・第590回。

11月最後の日曜日、皆様いかがお過ごしで
しょうか?
「今年は暖冬で…」という予報に
浮かれていたら、緩み切った気持ちに喝を入
れるようなこの寒さ。ここ最近の急な気候の
変化、夏から秋、そして秋から冬へと穏やか
に動く四季の移ろいが、私たち日本人にとっ
て、ちょうど良い気候上の緩衝材になってい
ることを実感させてくれますね。寒暖差で体
調を崩す方が多いように思います。皆様も十
分にご注意ください。風邪やインフルエンザ
についても、引き続きしっかりと体調管理を
お願いします。
冬本番はもうすぐ!
今週も元気に【自転車奔走記】はじまり!
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たきび版:介語苑・73ー41。

【語句】
社会保障(制度)

【意味】
「国民の生活の安定が損なわれた場合」に、
国や地方公共団体などが一定水準の保障を行
う制度(セーフティネット)。

【解説】
今週は「生業扶助」についてのお話。現在サ
ブテーマとして生活保護制度での教育・就学
の支援体系についてお話をしていますが、こ
の「生業扶助」は先週お話をした教育扶助と
は違い、就学・教育のみを目的としたもので
はないのです。また、他の扶助とはやや性格
を異としてもいます。ですので、サブテーマ
の内容に入る前に、まずはこの生業扶助の概
要と、どのような経緯で就学・教育支援の性
格を持つようになったか?についてお話をす
る必要があります。就学支援としての生業扶
助のお話の前に予備知識としてお読みを…。

まず生業扶助について、生活保護法では以下
のように規定されています。

(生業扶助)
第十七条 生業扶助は、困窮のため最低限度の
生活を維持することのできない者又はそのお
それのある者に対して
、左に掲げる事項の範
囲内において行われる。(以下略)

一 生業に必要な資金、器具又は資料
二 生業に必要な技能の修得
三 就労のために必要なもの

このように、生業扶助とは本来要保護者が経
済的に自立できるようになるよう、就労や技
能の習得を支援するためのものです。また下
線部で示した通り、現に生活保護を受けてい
る者だけでなく『その恐れのある者』も扶助
の対象としてもいます。つまり、「足りない
ところを補う」という保護の補足性の原理を
一歩進めて、扶助を活用することで要保護者
等の能力を引き出し生活の自立を図ること、
「困窮のため最低限度の生活を維持すること
のできない者」のほかに「そのおそれのある
者」についても対象としていること、この2
点が、他の扶助とは異なる生業扶助の社会福
祉制度的な性格を特徴づけています。

このように経済的な自立を支援するための生
業扶助ですので、その内容も生計の維持を目
的とした小規模の事業を営むために必要な資
金等を支援する「生業費」や、生計の維持に
役立つ生業に就くために必要な技能を修得す
る経費としての「技能修得費」など、生業維
持や就労のためのものになっています。なぜ、
この生業扶助がサブテーマである就学、具体
的には高等学校教育を受けるための扶助とし
て取り扱われているか?という疑問が出てき
ますよね。

ここで少し、生活保護制度下での高校進学事
情の歴史についてお話をします。生活保護制
度ができてから長い間、生活保護世帯の子ど
もが高校に通う費用についての支給自体があ
りませんでした。ですので、高校へ進学する
場合は生活保護世帯の家計、つまり世帯の生
活扶助の範囲でやりくりしたり、奨学金の利
用やアルバイトでまかなう、といった方法し
かなかった訳です。ですが、高校進学率が上
昇し今や100%近くという社会情勢になっ
た昨今、生活保護世帯や困窮者世帯の子供た
ちにとって高校進学には依然として高いハー
ドルが存在していることが問題視され、20
05年度から、高校進学・教育に必要な費用
が生活保護費として給付されるように制度化
されました。

ただ、高等学校は義務教育ではないので、教
育扶助からの支給にはならず、高校進学は就
職に有利である=広義の意味で就労のための
技能習得、という事で(実際はこのような単
純な図式ではありませんが…)生業扶助から
の支給という形を取るようになり、現在に至
っています。
というところで今週はここまで。
次回は、生業扶助の内容を高等学校就学の切
り口からお話しますね。
では、またお会いしましょう。
お相手は広森でした!
SEE YOU NEXT WEEK☆