【ケアマネの自転車奔走記】連載・第692回。
明日は秋分、お彼岸ですね。皆様いかがお過
ごしでしょうか?秋の気配はほとんどなく、
いまだに暑い日が続いていていますね。今年、
彼岸花は咲くんでしょうか?昼間の日差しを
浴びていると、少し疑問に感じますよね。
秋は未だ遠し。引き続き熱中症対策は万全に
お願いします。新型コロナウイルス感染症に
も注意が必要です。感染症予防、そして健康
管理にも十分ご配慮下さい。
では【自転車奔走記】はじまります!
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たきび版:介語苑・73ー132。
【語句】
社会保障(制度)
【意味】
今週は公衆衛生における「屎尿・塵芥処理」
について振り返ります。
「屎尿・塵芥処理」は、私たちの生活から日
々生み出される排泄物やごみを、衛生的かつ
社会的に適切な方法で処理する仕組みを指し
ます。言うまでもなく重要な社会インフラの
一つなんですが、公衆衛生上においても、こ
の領域は健康を守る根幹の一つであることは
間違いありません。では、歴史的背景から見
ていきましょう。
19世紀から20世紀にかけて、都市化の進展と
ともに屎尿やごみの処理が大きな社会問題と
なりました。路上や河川に投棄された排泄物
や廃棄物は、悪臭や景観の問題にとどまらず、
コレラや赤痢、腸チフスなどの水系感染症を
引き起こす原因となりました。日本において
も明治期に相次いだコレラの流行を背景にし
て、先週お話した上下水道を含めた衛生行政
が整備されるようになり、屎尿処理や塵芥処
理が環境衛生の柱として位置づけられるよう
になりました。当時の人々にとって、衛生的
な生活環境づくりは文字通り生命線であり、
現在の公衆衛生制度の出発点だったんですね。
続いては公衆衛生上の役割についてです。屎
尿・塵芥処理が公衆衛生に果たす役割は多岐
にわたります。第一は「感染症の予防」です。
屎尿には病原菌や寄生虫が含まれることがあ
り、適切に処理しなければ水源や食物を汚染
し、人から人へと感染が拡大します。第二に
は「媒介動物の防除」を挙げることができま
す。ごみや汚物の放置はハエや蚊、ネズミの
繁殖源となり、媒介動物による感染症の発生
や流行のリスクを高めるからですね。
第三は、「生活環境の改善」です。当然と言
えばそうですが、悪臭や不快な景観は人々の
生活の質を損ない、精神的な健康に影響を与
える可能性があるからですね。さらに言えば、
環境を衛生的に保つことで河川や地下水の汚
染を防ぐことができ、結果として安全な飲料
水の確保にもつながります。屎尿・塵芥処理
は単なる清掃や美化の問題と捉えられがちで
すが、近代公衆衛生上においては、人々の健
康を守るための科学的・制度的対応の一環と
して位置づけられているんです。法制度面で
は、1954年(昭和29年)に「清掃法」が制定
され屎尿やごみの処理が法的に整備されるよ
うになりました。そして1970年(昭和45年)
に「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」
(廃掃法)が制定され、廃棄物処理は一層体
系的な制度に移行します。屎尿については、
汲み取りやし尿処理場による対応から、下水
道の整備や浄化槽の普及へと進展することに
なり、これによって病原体が拡散するリスク
は大幅に減少し、都市生活における衛生水準
は飛躍的に向上しました。
塵芥処理の面では、焼却炉の導入や衛生埋立
が普及し、不衛生な野積み処分から脱却する
契機となりました。さらに現代では、リサイ
クルや廃棄物発電といった新しい処理技術も
導入され、塵芥処理は公衆衛生と環境保全の
両立が求められる時代となっています。この
ように公衆衛生の柱の一つとして機能してい
る屎尿・塵芥処理ですが、課題が全くないと
言う訳でもありません。近年のSDGsに代
表される循環型社会との調和の問題、ゴミ減
量、環境負荷の軽減、災害時の処理体制の整
備、さらには人口減少社会における設備・制
度の持続可能性の問題などです。
屎尿・塵芥処理は「当たり前のインフラ」と
映るかもしれませんが、公衆衛生の視点から
みれば、屎尿・塵芥処理は「過去の問題」で
はなく、現在進行形で社会の健康を支える基
盤と言うことができますね。
というところで今週はここまで。
次回は「公害対策」について振り返ります。
では、またお会いしましょう。
お相手は広森でした!
See You Next Week☆