【ケアマネの自転車奔走記】連載・第688回。
お盆も明けて、明日からいつもの日常が始ま
る日曜日…皆様いかがお過ごしでしょうか?
先週は全国各地で大雨による甚大な被害があ
りました。被災された皆様には、心よりお見
舞い申し上げます。被害がなかった地域にお
住いの方々も、寺田寅彦先生の『災害は忘れ
たころにやって来る』の警句を今一度思い出
していただき、自治体が公開しているハザー
ドマップ、避難場所、避難経路の確認、万が
一の時の連絡体制の確認、そして非常時物品
(非常持出品、非常用備蓄)のチェックをお
願いします。そして、熱中症対策も引き続き
万全にお願いします。
では【自転車奔走記】はじまります!
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たきび版:介語苑・73ー128。
【語句】
社会保障(制度)
【意味】
「国民の生活の安定が損なわれた場合」に、
国や地方公共団体などが一定水準の保障を行
う制度(セーフティネット)。
【解説】
今週は公衆衛生活動の「精神衛生」について
の振り返りです。公衆衛生における精神衛生
(メンタルヘルス)は、身体的健康と並ぶ重
要な柱のひとつとして位置づけられています。
このことは、WHO憲章が示す、健康は『身
体的・精神的・社会的に良好な状態』と定義
されていることからもわかると思います。歴
史的に見ると、かつての公衆衛生の課題は感
染症や栄養改善が中心でした。そして時代の
変化とともに、その課題は生活習慣病や心の
健康問題にまで広がり、現在では精神的な健
康の確保が社会全体の健康水準を左右する要
素と考えられるようになっています。日本に
おいては、精神保健福祉法(神保健及び精神
障害者福祉に関する法律)や自殺対策基本法
などの法的枠組みが整備され、その中で様々
な施策や取り組みが行われています。実際の
公衆衛生活動の場においては、【予防 → 早
期発見 → 治療・支援 → 社会復帰】といっ
た流れの中で実施されているのが特徴です。
では、それらの具体的な中身を振り返ってみ
ます。まずは(予防)から。この予防段階で
は、疾患の予防はもとより、「啓発活動」が
重要視されています。「啓発」には病気や障
害への正しい知識を普及する目的の他に、メ
ンタルヘルス教育、相談機関(「いのちの電
話」や自治体の相談機関など)、セルフケア
・セルフチェックなどメンタルヘルスに関す
る情報を発信することで、こころの健康を守
り、早期の対応が図れる体制を作ることを目
的としています。
そして(早期発見)です。この早期発見には
早期の介入も含まれます。具体的には、学校
での心理検査や企業のストレスチェック制度
を活用したスクーリングや健康診断での精神
健康チェック、そして自殺未遂者への継続し
た支援やアルコール・薬物などの問題を抱え
るケースへの早期介入プログラムなど、ハイ
リスク者へのフォロー制度があります。(治
療・支援)では、医療機関での病気に対する
専門的な治療はもとより、退院や社会復帰を
念頭においた医療・福祉の連携や地域移行支
援(長期入院患者の地域生活への移行を支援
する)が行われています。最後の「社会復帰」
では、社会に復帰した後の生活や地域。社会
とのつながりを上手く保つことを目的とした
支援が行われます。具体的には障害者総合支
援法に基づいた就労への支援(就労移行支援、
職場定着支援)、社会とのかかわりの再構築
(居場所作りなど)を目的とした地域活動支
援センター(障害のある人を対象として創作
的活動・生産活動・社会との交流促進などの
機会を提供する支援機関)等での支援、そし
て家族を支え、サポートすることを目的とし
た家族支援(家族会、ピアサポート事業)が
行われています。
このように、精神衛生の公衆衛生活動は、単
に「心の病気の治療」ではなく、予防から社
会復帰までの連続的な支援として構築され、
「切れ目のない支援体制」を作ることを重要
視した施策が実施されていることがご理解い
ただけたと思います。精神保健は独立した一
分野ではありますが、公衆衛生の分野におい
ては総合的健康の一部として法律・施策・地
域活動のすべてに組み込まれ、予防・早期介
入・社会復帰支援までを含めた体系的な取り
組みが行われているんですね。
というところで今週はここまで。
次回は「食品衛生」での公衆衛生活動を振り
返ります。では、またお会いしましょう。
お相手は広森でした!
See You Next Week☆