【自転車奔走記】第676回。

【ケアマネの自転車奔走記】連載・第676回。

5月最後の日曜日、皆様いかがお過ごしでし
ょうか?急に暑くなりましたね。沖縄や九州
の一部は既に梅雨入りとも。またジメジメし
た蒸し暑い日がやって来ますね…。皆様、熱
中症予防はすぐに始めて下さい。室温管理や
水分補給、十分な休養をお願いします。また、
食中毒など衛生にも十分お気を付け下さい。
では【自転車奔走記】はじまります!
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たきび版:介語苑・73ー117。

【語句】 
社会保障(制度)

【意味】
「国民の生活の安定が損なわれた場合」に、
国や地方公共団体などが一定水準の保障を行
う制度(セーフティネット)。

【解説】
今週も引き続き、公衆衛生の様々な施策や制
度についての振り返りです。テーマは「生活
習慣病・健康増進関連」です。まずは、公衆
衛生と生活習慣病・健康増進との関係につい
て概観します。「生活習慣病」は高血圧、糖
尿病、脂質異常症、心疾患、脳血管疾患、が
んなど、日常の生活習慣が発症・進展に深く
関与する慢性疾患の総称として定義されてい
ます。以前は加齢や不規則な食習慣・生活習
慣など個人の責任として考えられることが多
かった生活習慣病ですが、近年は、環境的な
要因や社会経済的格差、そして地域資源への
アクセスといった公衆衛生的な視点からの介
入が重要であるとの考えに変わってきました。

これに対応するため、日本では一次予防(発
症予防)から二次予防(早期発見・早期治療)、
三次予防(重症化防止)までをカバーするさ
まざまな制度が整備されるようになりました。
特に近年は、行動変容(人の考え方が変わる
ことで行動や習慣が変化し、その変化が定着
していく一連のプロセス)を促す保健指導や、
地域ぐるみの健康づくりが推進され、これか
らの重要な政策課題となっています。

続いて制度について振り返ります。まず「健
康増進法」です。この法律は、国民の健康の
保持増進、生活習慣病予防、受動喫煙対策、
栄養・運動・健診の推進を目的とした法律で、
国・都道府県・市町村が実施主体となります。
同法では、健康教育、健康診査、食育推進、
特定保健指導などを包括して制度化、実施す
ることが定められています。因みにワタシが
毎年お世話になっているメタボ指導(特定保
健指導)もこの健康増進法に基づいたもので
すね。お恥ずかしい話ですが…。

気を取り直して、次は「高齢者の医療の確保
に関する法律(後期高齢者医療制度を含む)」
です。2006年に改正された法律で、高齢者を
対象として健診(特定健診)や特定保健指導
の導入、メタボリックシンドロームへの対策
を盛り込んでいます。実施主体は医療保険者
で、保険者が生活習慣病予防の責任を負うこ
とが謳われています。

続いては「健康日本21」です。これは制度で
はなく「21世紀における国民健康づくり運動」
という正式名称が示す通り運動指針という扱
いですが、国民が主体的に取り組めることを
前提に、すべての国民が健康で明るく元気に
生活できる社会を実現するため、壮年期死亡
の減少や健康寿命の延伸、生活の質の向上を
目的に策定されている指針です。現在は第三
次(2024~2035年)が進行中ですが「すべ
ての国民が健やかで心豊かに生活できる持続
可能な社会の実現(厚生労働省)」をビジョ
ンとして、健康寿命の延伸・健康格差の縮小、
個人の行動と健康状態の改善、社会環境の質
の向上、ライフコースアプローチを踏まえた
健康づくりを基本指針として様々な運動や取
り組みが推進されています。

そして「食育基本法」も健康増進・生活習慣
病予防の公衆衛生的なアプローチですね。同
法では、栄養バランス・食習慣の改善を通じ
た生活習慣病予防や、家庭・学校・地域・農
業との連携による食育の推進が謳われていま
す。現役世代を対象としたものになると「労
働安全衛生法」を挙げることができます。現
役の働く世代を対象とした健康増進と疾病予
防を目的としていて、職場における健康診断、
ストレスチェック、生活習慣病対策、産業医
制度の整備などが制度化されています。これ
らの他にも、「がん対策基本法」や「自殺総
合対策大綱」なども重要な公衆衛生の法令、
制度となっています。

総括すると、現在の日本での生活習慣病予防
・健康増進への対策は、個人の選択のみに委
ねるものではなく、社会全体で取り組むべき
構造的課題として認識されています。ですの
で、これらに関連する様々な制度は、個人の
生活習慣に働きかけるだけでなく、社会とし
ての環境整備・地域連携・職域支援・教育普
及といった多層的な展開を伴った公衆衛生活
動と言うことができますね。

というところで今週はここまで。
次回も引き続き振り返りとなります。
では、またお会いしましょう。
お相手は広森でした!
SEE YOU NEXT WEEK☆