【ケアマネの自転車奔走記】連載・第703回。
勤労感謝の日。11月最後の日曜。皆様いか
がお過ごしでしょうか?さすがに日中も寒い
と感じる日が増えてきました。とはいえ冬本
番!というほどでもなく、なんとも中途半端
な感じです。明日からは12月。年末、師走、
年の瀬です。冬の訪れに備えて、風邪予防、
体調管理、そしてヒートショックには引き続
き十分ご注意下さい。また、インフルエンザ
が流行しています。予防接種がまだの方はお
早めに。では【自転車奔走記】はじまり!
ーーーーーーーーーーーーーーーー
たきび版:介語苑・76ー4。
【語句】
マネープラン
【意味】
結婚、出産、住宅購入、老後資金など、人生
のイベントで必要となるお金について、いつ、
いくら必要になるかを具体的に計画し、資産
形成の方法まで含めて考えるお金に関する計
画。(類)ライフプラン:人生の計画・生き
方の展望
◎短期連載企画
【日本社会がたどってきた
〈老い〉と〈お金〉の文化史】
【第3回】
構造転換の時代
自助・公助・共助の再配置と老後不安の誕生
先週までお話してきた日本型福祉社会も時代
の波と共に大きな変化、構造転換を迫られる
ようになりました。今週はその辺りについて
お話をしていきます。先ずは歴史的な経緯と
社会情勢の変化から見ていきましょう。
その1
国家と企業のゆらぎ
この世の春を謳歌したバブル経済の崩壊をき
っかけに、長期にわたる経済の停滞が起こり
ます。企業も例外でなく、業績の悪化や企業
規模の縮小などが連鎖的に発生し、多くの企
業で、日本型福祉社会の柱の一つとなってい
た企業福祉の縮小という変化がはじまりまし
た。具体的には、退職金の削減や企業年金の
見直し、そして社宅など福利厚生の縮小が代
表的です。そしてその流れにかぶせるように
雇用の自由化の波が襲います。その結果、終
身雇用という日本独自の雇用形態が後退して
いくことで、「企業が社員と老後を守る」と
いう高度成長期の物語がここで終わりを告げ
ることになりました。経済の停滞は「公」に
も大きな影響を与えます。1990年代は特に年
金制度への不安が広がった時期でもありまし
た。年金基金の赤字問題が表面化し、給付水
準の見直しや進行する少子高齢化による制度
の持続性への疑念が生まれたのもこの時期か
らです。
このようにして、日本型福祉社会の柱であっ
た「企業」と「公」の後退により、『老後は
自分で準備するもの』という発想が急速に広
がり、老後観は「依存から自助へ」向けてス
ライドし始め、そしてそれは日本型福祉社会
の最後の柱である「家」にも波及します。
その2
高齢者像が変わる
この時期、高齢者像にも大きな変化が現れ始
めました。80年代までの日本社会は、「老い
たら家に引き取り、静かに余生を過ごす」と
いう価値観が主流でしたが、90年代以降、社
会は急速に「自立」へ向けて方向転換してい
きます。高齢者の社会的な像が「引退した人、
悠々自適に余生を送る人」から「高齢であっ
ても積極的に社会に参加する」「自律的に社
会と関わる」といった具合です。背景として
①社会が高齢者に求める役割自体の変化と②
老後を自分らしい生き方を再設計する時期と
捉える価値観の浸透を挙げることができると
思います。この時期から、「生涯現役」とい
う言葉やシニアボランティア制度、再雇用・
継続雇用制度の創立、大学の公開講座や学び
直しの機会が増えるといった社会的変化が始
まったことからも頷けますね。まさに高齢者
像のパラダイムシフトと呼んでも良いと思い
ます。このような高齢者像の変化は、進行し
続けていた核家族化の波と相まって、「家」
の変容、つまり旧来の「家」という因習や概
念から「高齢者」を分離する社会的な価値観
の広がりを助ける結果となりました。家や家
族に守られる「高齢者」ではなく、独立した
社会的個人としての「高齢者」像の誕生です
ね。そして、さらに制度上のパラダイムシフ
トが起こります。
その3
介護保険制度がもたらした
選択の自由と個人化の加速
介護保険制度の始まりを代表とする社会保障
改革は、高齢者の生活史における革命的な政
策となりました。日本型福祉社会の「措置」
から、「本人の選択」、「自立支援」、「社
会サービスへのアクセスの平等」、「応益負
担への転換」などを謳う介護保険制度は、介
護を「受けるもの」から「選べるもの」に変
えました。そして、これにより高齢者は、介
護という高齢者にとって避けることができな
いステージにおいても、自立の主体として認
識されるようになりました。つまり、人生の
最後まで「自立した個人」であるということ
です。個人の尊厳という意味では当たり前の
話ではありますが、注意しなければいけない
のは、このことがパラダイムシフトが惹起し
たという点です。急激な価値転換は歪を生む
ことがあります。先ほどの「選択できる」と
いうことは、「間違った選択をしたら自己責
任」という構造も同時に生み出すわけで、こ
のことが高齢者が、かつてのように家族や制
度に包まれる存在ではなく、自己管理・自律
の主体として扱われる存在へと変わっていっ
た要因の一つであることは間違いないと思い
ます。社会参加、自律・自立、などの新しい
高齢者像の浸透は、個人の尊厳という意味で
非常に評価されるべき事象ですが、皮肉なこ
とにこれが老後不安の構造的な原因の一つと
なっていきます。
歴史的、社会的な変化をお話してきましたが、
少々長くなりました。今回はここまでとして、
続きは次回【その4. 自助・公助・共助の再
配置】からお話を続けることにします。
では、またお会いしましょう。
お相手は広森でした!
See You Next Week☆

