【自転車奔走記】第702回。

【ケアマネの自転車奔走記】連載・第702回。

今日は勤労感謝の日。皆様、いかがお過ごし
でしょうか?暖かな日が続いています。『冬
らしくない!』と思う反面、寒さがだんだん
辛くなる年波のワタシにとって暖かい冬は…
やっぱり楽ですね(笑)。とはいえ、朝晩は
冷え込む日も増えてきました。風邪予防、体
調管理、そしてヒートショックには十分ご注
意下さい。
では【自転車奔走記】はじまります!
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たきび版:介語苑・76-3。

【語句】 
マネープラン

【意味】
結婚、出産、住宅購入、老後資金など、人生
のイベントで必要となるお金について、いつ、
いくら必要になるかを具体的に計画し、資産
形成の方法まで含めて考えるお金に関する計
画。

☆短期連載企画
〝日本社会がたどってきた〈老い〉と〈お金〉
の文化史〟

【第2回】国家と企業が支える時代——制度
が老後を包んだ黄金期~戦後から1980年代
——“日本型福祉社会”が生んだ安心のかたち

その1
「年を取ること」に安心が宿った時代
前回で触れましたが、「老後にお金がない」

という不安が社会に満ちるようになったのは、
実は比較的最近のことで、戦後、高度経済成
長期を経て1980年代までの日本には、ある意
味黄金期ともいえる時代がありました。それ
は、国家と企業が両輪となり、国民の生活全
体を丸ごと支える構造が成立していた時期な
のです。それはズバリ、働く者であることが、
すなわち保障される者であることを意味して
いました。そして、そんな時代背景の中で育
まれたのが「日本型福祉社会」です。

その2
日本型福祉社会とは?
1970年代以降、“日本型福祉社会”という言葉

が盛んに使われるようになりました。この言
葉には、ヨーロッパ型の「高福祉国家(国が
医療、教育、年金、介護などの社会保障サー
ビスを広く提供し、国民の生活を包括的に支
える国家)」と異なり、家族・企業・地域と
いった社会的装置が機能し、国家はそれらを
補完する形で福祉を支える、というモデルに
なります。このモデルを構成するのが、
〇企業が提供する終身雇用と企業年金
〇家族(特に女性)による家族ケアと介護
〇国家が制度保障する高齢期の基礎的生活
という要素になります。そしてこれが安心の
設計図となり、多くの人々が「働いたら、そ
の先には安定がある」という未来像を描くこ
とができ、さらに老後の生活モデルとして皆
が共有していた訳です。このことが、高度経
済成長の要因の一つであったことは、日本の
社会史を考える上で重要なポイントですね。

その3
日本型福祉社会がもたらしたもの
そんな社会情勢の裏で、実際の高齢者の暮ら

しには制度が抱える限界と矛盾も生まれはじ
めていました。2000年に介護保険制度がで
きる前、高齢者福祉は「措置制度」と呼ばれ
る仕組みによって支えられていました。「措
置」とは、行政が必要と認めた人に対し、サ
ービスや施設利用を決定するという仕組みで、
結果として介護サービスは行政が決める「恩
恵的」なものとなってしまいます。加えて、
所得の低い高齢者は入所対象として優先され
るが中間層は対象外になりやすく、かつサー
ビス利用の選択肢は極めて限られ、地域差が
大きいという問題も孕んでいました。この
「措置」による支援は、制度としては最低限
の保障ではあったものの、「必要な人は行政
に頼ればよい」という発想を生むこととなり、
結果的に家族(特に女性)への負担を暗黙の
前提として社会的に許容し続けることにもつ
ながりました。当時の家庭における高齢者介
護は、ほとんどが「嫁・娘」の役割であり、
介護は当然の家族責任と考えられていたこと
を思い浮かべていただければと思います。つ
まり、制度に支えられた「安心」の裏側には、
女性の無償労働という見えない社会的コスト
が存在していたということなんですね。

もう一つ忘れてはいけないことが、社会的入
院という現象です。これは施設も在宅ケアも
十分に整っていなかった時代、介護の受け皿
として「病院」が使われるという状況が頻発
したことを指します。言い換えると医療が、
介護の代替として機能していたことになり、
徐々に進む高齢化の波によって医療費の増大
や病床の不足などが問題視されるようになり
ます。これらは一例ではありますが、日本社
会のあちこちで家族・医療者・行政ともに限
界を感じる構造が徐々に露わになってきたわ
けですね。

その4
成熟と限界——黄金期の終わり
こうした構造的課題が表面化し始めた1980

年代後半、社会は大きな転換点に差しかかり
ます。バブル経済崩壊、少子高齢化の進行、
財政の圧迫、経済の停滞と衰退、日本型福祉
社会の限界が迫ってきました。長引く経済停
滞や経済構造の変化により終身雇用が崩れ始
めます。追い打ちをかけるように税収の減少
と膨れ上がる社会保障費により国家財政に赤
ランプが灯り、経済構造の変化によって女性
の社会参加が急増します。このようにして、
日本型福祉社会を構成していた企業も家族、
そして国も、もはや老後を丸ごと支える、言
い換えると「老後の安心を企業と家族、国が
分かち合っていた時代」は過ぎ、「自助」と
「公助」の再編と新しい社会モデルの構築が
避けられない局面を迎えることとなったので
す。次回(第3回)は、その転換点で「老後
の安心」がどのように崩れ、再構築されてい
ったのかを分析します。

というところで今週はここまで。
次回は『【第3回】構造転換』の時代です。
では、またお会いしましょう。
お相手は広森でした!
See You Next Week☆