【ケアマネの自転車奔走記】連載・第691回。
9月最初の日曜日、皆様いかがお過ごしでし
ょうか?「秋の気配が…」と言いたいところ
ですが、「夏の残滓」どころか「まだまだ続
くぜ夏!」と半分自棄になって叫びたい心境
です。暑いですね…。
まだまだ熱中症対策は万全にお願いします。
新型コロナウイルス感染症にも注意が必要で
す。感染症予防、そして健康管理にもご配慮
下さい。では【自転車奔走記】はじまり!
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たきび版:介語苑・73ー131。
【語句】
社会保障(制度)
【解説】
今週は公衆衛生における「上下水道」につい
て振り返ります。日本の上下水道は、公衆衛
生施策の基盤となる社会インフラとして整備
されてきました。その歴史を振り返ると、上
下水道の発展は都市の利便性を高めるという
よりも、感染症予防や健康保持といった公衆
衛生上の課題に応えるために推進されてきた
ことが分かります。
明治期まで、日本はコレラやチフス、赤痢な
どの水系感染症(病原微生物に汚染された水
を直接摂取することを感染経路とする感染症)
に繰り返し苦しめられてきました。特にコレ
ラは、1879年(明治12年)に、患者数16万、
死亡者数10万人を超える大流行となり、大き
な被害をもたらしました。そして細菌学の発
展に伴い、清潔な飲料水の確保の重要性が高
まりました。日本では1890年に「水道条例」
が制定し、近代水道が導入されることで安全
な飲料水の供給が始まりました。この近代水
道は都市衛生の改善に直結して、清潔な飲料
水の確保は感染症の流行を大幅に減少させる
ことができました。
そして昭和期、下水道の整備が本格化し、生
活排水やし尿を処理することで感染症の拡大
を防ぎ、生活環境を衛生的に保つ仕組みが整
えられていきました。この歴史的な流れから
も、上下水道の普及は「感染症対策の社会的
基盤」として発展してきたことがご理解いた
だけると思います。では、現行の制度を振り
返りましょう。
現在、上水道は「水道法」に基づき運営され、
国民に清浄で安全な飲料水を安定的に供給す
ることに寄与しています。浄水場でのろ過・
塩素消毒などにより病原体を除去し、日常生
活や医療・福祉の現場に欠かせない清潔な水
の提供ですね。一方、下水道は「下水道法」
に基づき整備され、排水処理を通じて感染症
や悪臭の発生を防ぎ、公共用水域の水質を保
全しています。別個の法体系になりますが、
上下の水道施策が合わさることにより、上下
水道は「個人の健康保護」と「地域の環境衛
生」を同時に担う仕組みとして機能している
んです。
現代における上下水道施策の公衆衛生的意義
はさらに広がりを見せる一方、様々な課題も
現れてきています。まずは「災害時レジリエ
ンス」の確保です。「災害時レジリエンス」
とは『災害が発生した際、被害を最小限に抑
え、被災後も社会やシステムを速やかに機能
させ、回復させる総合的な対応力と回復力』
のことを指します。要は(減災と被災後の速
やかな回復を可能とする社会的な対応力・懐
の深さ)と考えて下さい。地震や豪雨災害の
際、上水道は緊急給水体制を整え、下水道は
浸水被害や衛生リスクを軽減する役割を果た
すことで、感染症などの二次災害の発生防止、
そして復旧・復興はもとより日々の生活の基
盤となる基礎インフラを保持するのに必要不
可欠な役割を担っていますので、それらの安
定的確保は災害時対応の重要な課題となって
います。
第二は「老朽化や人口減少に伴う持続可能性」
への対応です。今、社会的な問題となってい
る水道管の老朽化問題を例に挙げると、この
問題は単なる設備の老朽化だけではなく、人
口減少により水道料金の収入が減ることでの
水道事業体の財政難、そこからくる更新費用
の確保の問題、さらには技術者の高齢化と後
継者不足など、様々な問題が絡まり合う複合
的課題となっています。解決のためには更新
費用の確保や小規模地域での効率的運営が必
要となりますが、老朽化は現在進行なので、
そのことが課題の解決の大きな障壁となって
います。
上下水道は単なる都市インフラではなく「感
染症予防」「健康保持」「快適な生活環境の
維持」といった公衆衛生の根幹を支える制度
です。近代以降の感染症対策から始まり、今
日では環境保全や災害対応、持続可能性まで
を包含する、幅広い公衆衛生施策の基盤とし
て機能しているんですね。
というところで今週はここまで。
次回は「屎尿塵芥処理」について振り返りま
す。では、またお会いしましょう。
お相手は広森でした!
See You Next Week☆