【ケアマネの自転車奔走記】連載・第322回。
早いもので8月も中盤にさしかかりました。
今週はお盆の時期ですので、お墓参り等でご実家
へ帰省される方も多いと思います。道中お気をつ
けて、ご実家で楽しいお時間をお過ごし下さいね。
では【自転車奔走記】開講です!
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たきび版:介護苑 その7
【語句】
フレイル
【意味】
主に加齢が原因で、運動機能や認知機能が低下する
ことで生活機能に問題が生じ、健康障害を起こしや
すくなっている(要介護状態等になる)が、適切な
支援や介入により生活機能の維持や向上が可能であ
る状態(像)。
【解説】
①「フレイル」とは。
この言葉は元々老年医学で使用されていた虚弱や老
衰を表す【Frailty】の共通訳語として、平成26年に
日本老年医学会が提唱したものです。人間は齢を重
ねて老いていくに従い、身体機能(運動や活動の能
力)や認知機能が衰えてきます。その衰えが進行す
ると、やがて日常生活を送るのに様々な支障や障害
が生じるようになり、やがて日常的に支援や介護を
要する状態(要介護状態)へと至ります。フレイル
というのは、まさに要介護状態へ至る一歩手前の状
態で、健康・健常な生活と要介護状態のちょうど中
間に位置付けられています。一方フレイルにはもう
一つの意味が込められていて、この状態であっても
適切な支援やサポートがあれば要介護状態に至るこ
となく、生活機能(日常生活を健康に送るための能
力や機能)の維持や向上が可能であるという事です。
つまり、要介護状態へ至らない為の予防的支援が必
要である状態ですね。因みに厚生労働省の報告書で
は『加齢とともに心身の活力(運動機能や認知機能
等)が低下し、複数の慢性疾患の併存などの影響も
あり、生活機能が障害され、心身の脆弱性が出現し
た状態であるが、一方で適切な介入・支援により、
生活機能の維持向上が可能な状態像』と定義されて
います。フレイルは高齢者特有と言う訳ではありま
せんが、高齢者がその状態に特に陥りやすいことで
あることは間違いありません。
②フレイルの原因。
フレイルが発症する原因は様々ですが、主に加齢に
よる心身の衰えや社会・環境の変化が原因とされて
います。以下に主なものを挙げます。
・加齢に伴う活動量の低下と社会交流機会減少
・身体機能の低下(歩行スピードの低下など)
・筋力の低下
・認知機能の低下
・易疲労性や活力の低下
・慢性的な管理が必要な疾患にかかっていること
・体重の減少
・低栄養
・個人の収入・教育歴・家族構成などの問題
上述の原因因子を整理すると、フレイル発症の原因
を以下の3要素として整理することができます。
(1)身体的要素。
加齢に伴う筋肉量の減少(サルコペニア)や疾病な
どが原因で動作が遅くなったり転倒しやすくなった
りする。
(2)精神的要素。
アルツハイマー病などの認知機能の障害や、近年問
題視されている老年うつ病、意欲や判断力の低下な
どの精神や心理的な問題。
(3)社会的要素。
配偶者との死別や核家族化による独り住まい、社会
交流の減少や閉じこもり状態、退職等による収入減
少からくる経済的な困窮など。フレイルはこの3つ
の要素が相互に関連しながら発症し、進行すると考
えられていますが、その中でも特に(1)の身体的
要素が発症に至る過程で大きなウエイトを占めてい
ます。
③フレイルの進行。
さて『サルコペニア』という言葉が出てきましたが、
フレイルのメカニズムを理解するうえで非常に重要
な語句なので、解説しますね。
「フレイル」関連語
【語句】
サルコペニア
【意味】
加齢や疾病が原因で筋肉の量が減少することで、全身
の筋力が低下したり、歩行などの身体機能の低下が起
こっている状態。
【解説】
高齢者に発症が多く、要介護状態へ至る重要なトリガ
ーで、フレイルの重要なファクターでもあります。身
体を動かすために必要な筋肉が減少することで、身体
動作や身体活動上の困難や障害が生じ、それが生活機
能障害を招き、やがて生活活動に介護や支援を要する
状態(要介護状態)へと至ります。加齢が原因で発症
することが多いですが、加齢以外にも①寝たきりの生
活や活動性が低下することによって起こる廃用による
もの②癌や虚血性心不全、末期腎不全、内分泌疾患な
どの疾患によるもの③栄養の吸収不良、消化管疾患や
薬の副作用による食欲不振、エネルギー・タンパク質
の摂取不足によるもの、などがあります。
サルコペニアの解説は以上となりますが、フレイルは、
発症してからも適切な支援や介入がないとどんどん進
行していきます。その進行のメカニズムにサルコペニ
アが大きく関わっているんですが…ちょっと話が長く
なりますので、今週はここまでにしておきます。
フレイルは、介護保険制度や高齢者福祉施策の基本的
考え方の一つである【介護予防】をより深く理解する
ために欠かすことができないものですので、次回も引
き継続きフレイルを取り上げます。
では、またお会いしましょう。
SEE YOU NEXT WEEK