【ケアマネの自転車奔走記】連載・第266回。
梅雨真っただ中、皆様いかがお過ごしでしょうか?
九州、中国地方では過去に例を観ない豪雨でたくさ
んの被害が出ました。被災された地域の皆様に改め
てお見舞い申し上げます。幸いにして三重県では今
のところ大きな被害は受けていませんが、ここ数年
の気象被害は地球規模でまさに異常というか私たち
の経験値を遥かに超える規模でやってきています。
決して「もしも・・・」でも「万が一・・・」でも
なく、“いつでも、どこでも起こりうること”として、
私たちは日頃からしっかり準備するのが必要ですね。
では【自転車奔走記】始まります!
++++++++++++++++++++++
今週からアルコール依存症患者の社会復帰に向けた
アプローチ、そして退院後の支援についてお話しし
ていきます。前回お話したとおり依存症患者が退院
して社会に戻るという事は、依存症患者にとっては
時として非常に過酷な環境に身を置く、つまり依存
対象物質や行為が“いつでも”手に入る状態にさらさ
れるという事になります。アルコール依存症患者の
場合ですと、TVではお酒のCMが一日中流れ、コン
ビニやスーパーに入れば酒類販売コーナーがあり、
最近は少なくなりましたがお酒の自動販売機もあり
ます。会社や仲間内でも「ちょっと一杯」と言った
いわゆる“飲ミニケーション”や“宴席・接待”といっ
た付き合い酒などなど、日常的にお酒が溢れかえっ
ている環境で暮らしながら断酒を続けていかなくて
はいけない訳ですから、社会復帰後の支援体制の構
築が非常に大切になります。社会の中で暮らしなが
ら断酒を続けるためには「三本柱」と呼ばれる
①通院の継続
②断酒薬・抗酒薬の服用
③自助グループの参加
が非常に効果的とされていますが、患者本人がその
三つを継続していくことができるように、ある程度
の準備が必要なのは言うまでもありません。
順を追って見ていきますと
①の通院については、退院後も継続して専門医療機関
へ受診し、治療や療養指導を受けるための調整が必要
となります。通院先の医療機関については入院してい
た医療機関に継続して通院する場合もありますし、遠
方からの入院であれば、通いやすい地域の専門医療機
関へ紹介して退院後のフォローを依頼する場合もあり
ます。また、通院受診という訳ではありませんが専門
の看護師やケースワーカーのいるアルコール依存症専
門のデイケア(医療)へ定期的に通ったり訪問看護
(医療)のサービスを利用することも良く行われます。
この通院を続けることで
②の断酒・抗酒薬の処方を受けることができます。因
みにこれらの断酒・抗酒薬(抗酒剤)とはどんなもの
かと言いますと、この薬を飲むと体内で行われるアル
コール分解酵素の働きを一時的にブロックする、つま
り一時的に体を極端にお酒に弱い状態にしてしまうも
のです。これらの薬を飲んでいる状態でアルコールを
摂取すると、たとえ少量でも直後に顔面の紅潮、血圧
低下、心悸亢進(どうき)、呼吸困難、頭痛、悪心、
嘔吐、めまいなどを起こし、ひどいときには立つこと
もできなくなります。つまり、お酒が飲めない人がア
ルコール摂取した時とほぼ同じような状態になります。
ただ、その症状は数時間で消失しますが、抗酒剤を飲
んでいる状態でアルコールを摂取した時の苦しさはか
なりのものですので、飲酒渇望が生じた際の予防線と
言う意味で服薬が勧められています。(飲んでいない
人もたくさんいます)。ただ、この抗酒剤も飲まない
と意味がありませんので、本人がしっかり服薬をして
いるかどうか?の管理はある程度必要になる場合があ
ります。その場合は、訪問看護による服薬管理・指導
や家族の協力による服薬管理を行ったりします。
そして③の自助グループ参加ですが、入院中にAAや
断酒会に参加して予め参加するグループを決めたうえ
で退院しますので、退院してからグループを探したり
することは殆どありません。ただ、参加するかしない
かはあくまで本人の意思によるところが大きいのも事
実です。グループのメンバーによるフォローシップも
ありますが、強制力はありませんので最終的には本人
の意思ということになります。と、今まで見てきたよ
うに、これらの柱に上手く繋がるように退院前から調
整を行っていきます。また、当然ですがご高齢の依存
症患者の場合はケアマネに事前連絡やサービス調整の
依頼が入ることもあります。
さて、以上のように準備を進める訳ですが、ここで見
逃してはならない重要なポイントがあります。それは
「家族」の存在です。前回お話しした通り、どれほど
入念に退院準備、退院調整をし、本人がどれほどの決
意をもっていたとしても、家族がイネブラー(依存症
の支え手)であったり、また家族との共依存関係がそ
のままであれば、相当の高確率で再使用に至ります。
つまり、家族がいる場合は家族に対する準備と言うか
支援も非常に重要な位置を占めることになります。
と言うところで、次回は家族への支援についてお話し
をします。では今週はこれにておしまい。
またお会いしましょう!
SEE YOU NEXT WEEK