【ケアマネの自転車奔走記】連載・第255回。
桜の盛りも過ぎ、季節は晩春に移ろうとしてい
ます。皆様いかがお過ごしでしょうか?生憎お
花見には行けませんでしたが、移動中の車窓か
ら満開の桜は堪能できました。風が吹くと舞い
散る桜の花びら…やっぱり春は良いですね。
これからますます暖かくなり過ごしやすくなり
ますが、不安定な天気もまだまだ続きます。
皆様、体調には十分ご注意くださいね。
では【自転車奔走記】始まります!
-------------------------------------------------------------
今週はアルコール依存症のリハビリプログラム
である③の心理的社会的療法についてお話しを
します。このリハビリ期が持つ重要なポイント
は『個人が依存症という病気と向き合う』とい
う事です。ある程度の入院によって体からはア
ルコールは抜けていますが、そもそもアルコー
ルの問題摂取を起こしてしまう大元である依存
症という病気に対してのアプローチが無いまま
退院したら、ほぼ100%の確率で再飲酒し問題飲
酒とトラブルを繰り返す状態に戻ってします。
ですのでこのプログラムでは一番重要な依存症
という病気に対する治療とリハビリテーション
が開始されます。アルコール依存症患者は様々
な特性や偏った考え方(※1)を持っています。
例えば否認や自己中心的思考、他者への攻撃性
などが挙げられますが、それらの心理的な特性
について精神科医や臨床心理士等が中心となり
カウンセリング等を通じて心理面から依存症患
者へ治療やリハビリに向けたアプローチを行い
ます。そして依存症患者はそれらの療法を通じ
て、自身を振り返り、自身のありのままの内面
の現実と向き合い、そして克服すべきことは克
服し、飼い慣らす部分はその方法を学ぶことで、
依存症という病気と向き合いながら上手く生き
ていく術を身に付ける…と言うのがこの心理的
社会的療法の骨子となります。例として「否認」
の思考を取り上げますと、アルコール依存症患
者には『否認』という心理的な特性があって、
自分がアルコール依存症であることを認めよう
としない、自分は飲酒さえしなければ何も問題
がない、と考え、自分の飲酒によって引き起こ
され(た)個人的、家庭的、社会的葛藤やトラ
ブルの存在を認めようとしないことが非常に多
く見られます。
この否認を取り払う、つまり『自分はアルコー
ル依存症である』と認めることがアルコール依
存症からの回復の本当の第一歩になりますが、
強制や代償を伴っての“認め”ではなく、あくま
で自身の“気付き”としての“認め”に至るため、
個別のカウンセリングや他の依存症患者との話
し合い、自身の内省などの療法が行われます。
(余談ですが、後日お話しする予定の断酒会や
AAなどの自助グループでは、この自らの否認
を認めることを『私たちは酒(アルコール)に
対して無力であることを認める』と表現します)
これらの療法のうち、個別のカウンセリング等
で行われるのが個人精神療法、集団での話し合
いやを中心に行われるのが集団心理療法、近年
増えてきた自身の内省や話し合いを通じて考え
方や行動を修正していく認知行動療法、そして
自助グループへの参加が心理的社会的療法に含
まれます。
というところで今週はここまで。次回はそれら
の療法についてお話しをしていきます。
では、次回またお会いしましょう。
SEE YOU NEXT WEEK
(※1)
アルコール依存症患者の心理的特性については、
自転車奔走記ブログアーカイブの2016年8月21日
と28日、9月11日分の記事をお読みください。